あいつ

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よく見ると、格好は男でもよさげな格好。 まあ、女の子でもこういう格好はいる。 だから余計に混乱する。きっと今の俺の目は、ぐるぐる回っているに違いない。 「あ、ごめんなさい。馴れ馴れしかったかな。……おすすめ、いらない?」 どっか甘えた目つきで見上げてこられると、尚のことパニくるっつーの。 「や…、その……別にそんなの頼んでないっつーか」 「じゃ、やめとく?」 あれもこれも甘い声。これで男なのか?それとも、ぼくッ子? 沸々とわいてくる感情を持て余し、じろじろと見下ろしてしまう俺。 確かめたい欲求に駆られ始める。 (確かめるって、どうやって?) 欲求に素直に従うはいいとして、どう確認すんだよ。 悶々としている俺を、黙ってじっと見つめてきたと思ったら、ニッコリ微笑んでから、 「興奮…しちゃった?」 俺のソレを、パンツの上から軽く撫であげた。 「……っっ」 触られた場所に、じわっと痺れたような感覚が走る。 俺は一体どんな顔をしてたのかな。 こいつが、やけに嬉しそうに笑ったんだ。 そうして、俺に指で招くように何度も指を振る。 「な、なんだよ」 警戒しつつも顔を近づけた俺に、そっと囁くそいつ。 「本当に女の子が好きなの?君って」 言われたことを理解するには、俺の経験値は低かったんだ。 真っ赤になって、反射的に後ずさった。 DVDの棚にぶつかって、こぶしで口元を隠す。 まっすぐこいつを見られない。 「女の子が好き……なつもり、だったんじゃない?もしかして」 そんなはずはない。 今まで女の子と何人かヤってきてても、なんの問題もなくって。 勃つモノは勃ったし、出るものは出たし。 ただ、すっきりしたことがなかっただけで。 「違、う」 混乱してるせいで、冷静になってないだけ。 だから、女の方が好きに決まってる。 「ちょっとだけ待ってて」 そういい、奥の棚の方に消えていき、程なくして一本のDVDを持ってきた。 「はい、これ」 手渡されたDVDのパッケージを見て、俺は目を丸くした。 「これ、ぼくが出てるから。これでヌけたら、そっち確定」 ぼかされてはいるけど、ほぼ見えている一糸まとわぬ姿のロリ系男子。 「どっちかそっちか、どっちもか。今度会ったら教えてね」 そう言ってから、すぐそばの棚から自分用のDVDを手にして、笑顔でそいつは去って行った。 「今のって一体」 あっという間の出来事すぎた。
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