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「ただいま。」
誰もいない家に帰る。当然返事はない。
「はぁ。明日から憂鬱だわ。」小春は独り言をこぼした。
私は泉小春。小学校卒業の日、また中学で再開を誓いあって友達と別れ学校をあとにする。帰り道母からとんでもない話を聞いた。
「小春、明日三重に引っ越すから。」
「はぁ?なんの冗談?」
最初は笑えない話と思っていたが…。
帰ってみるとすでにほとんどの荷物がなくなっている。呆然とする私に母は、「明日早いんだから荷物をまとめておきなさいよ。」と言うではないか。
「お母さん、これはどういうこと?」
「仕事で三重にいくことになったの。今朝の役員会で決定したのよ。」
母は、月島グループ社長秘書を務めていた。とある事件で東北で窮地に追い込まれていた月島グループ。事件の当事者であった先方の社長と和解し、東北支社支店長に任命したことにより持ち直した。
今日本三大企業が犇めいている東海、三重県に来月から1年間社長自ら乗り込み、やり手の長男と東海支社を発展させるらしい。
必然的に社長秘書の母も社長についていくことに。私の父は単身赴任で愛知にいる。たまに会いに来てくれるのだが、こちらに身内のない私は三重に強制連行である。
友達との別れの時間もろくに作れなかった私は早朝の飛行機に乗せられ、全くわからない三重県四日市につれてこられたのであった。
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