side takatoshi②

3/12
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
「こんなことで悩んでるなんて、莉々には知られたくない」  莉々の前では格好よくいたい。だからこそ莉々の前ではいつも気取っているのだが、いつ化けの皮が剥がれるか分かったものではない。 「とにかく、近いうちにまた顔出すか」  告白はしないにしても、こまめに顔を出して距離を縮めておくにこしたことはない。  学部は違うが、同じ大学に進学するので、授業が同じ時間なら一緒に登校することもできるだろう。そういう話をしに行くのでもいい。  鷹利は莉々に会いに行く理由を考えはじめた。  ところが、行動に移す前に鷹利のもとへチャンスが舞い降りてきた。 (あれ、莉々だ)  友達と遊んだ帰り道、自分の数十メートル前を莉々が歩いていた。あまり外へ出歩かない莉々を見かけるのは珍しい。  声をかけようかと後ろから観察していると、莉々の様子がおかしいことに気がついた。 (なんか、よたよた歩いてないか?)  元よりきびきび歩くタイプではないが、それにしても足取りが怪しい。身体も左右に揺れている。鷹利は気になって小走りで近づくと莉々に声をかけた。 「莉々」 「……鷹利」  覗き込んだ顔はいつもより赤くなっていた。瞳もこころなしか潤んでいる。あきらかに体調が悪そうだ。 「風邪でもひいたのか?」 「なんでもない」  莉々が弱々しく首を横にふる。 「なんでもないってわけないだろ、そんなふらついて。調子悪いなら外をうろつくな」 「好きで出かけてるわけじゃない」  不服そうに莉々は頬を膨らませて見上げてくる。涙がこぼれそうなほど潤んだ瞳は、どうみても風邪を引いているようにしか見えない。 「じゃあなんで」  うろついてるんだ、という鷹利の言葉は莉々によって奪われた。 「あっ……」  立っているのも辛いのか鷹利の胸に倒れてくる。ふわりと甘くていいにおいが鼻孔をくすぐる。 (えええええ――ッ!)  内心絶叫しながら、鷹利は莉々の身体を支える。本人は強がっているがこれはかなりヤバいのではないだろうか。 「家まで送る」  抱き上げたいのを我慢して、肩を支えて歩く。莉々の足取りが不安なのでゆっくりだ。 「家じゃなくて、鷹利の家に行きたい」 (なんで)  行き先はほぼ同じだ。鷹利の家に行くくらいなら早く家に帰って休んだ方がいいだろう。しかし莉々は頑なだった。鷹利の家に行くと言って聞かない。 「別にいいけど、うちついたら横になって休めよ」
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!