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庶民的な莉々はついそんなことを考えてしまうが、きっと考えるだけ無駄だろう。
ルイは淫魔の能力を活かして、そこらへんの男に買わせているに違いない。人間界にいるときのルイの生活は誰からかの援助で成り立っている。
男に貢がせることは淫魔にとって当たり前の常識であって、ルイはなにも悪いことをしている自覚はない。ただ莉々に薔薇の花束を贈りたかっただけなのだろう。こういう常識もあるということに慣れていかないいけない。
(僕には向いてなさそうだけど)
産まれた時から人間界にいるせいか、常に勤勉で自分の生活資本がしっかりしていない生活なんて莉々には考えられない。自分でお金を得て、ちゃんと足をつけて生活する。それが自分に求める未来像だ。
ルイが覗き込むようにして莉々の顔を見つめてきた。
「今夜、一緒に精気を吸いに行こう? 大人になったお祝いに、美味しい精気が搾り取れる男を紹介するよ。早速その男の夢に潜り込もうよ」
さも当然とばかりにルイが誘ってくる。それに対して莉々は首を横に振った。
「ルイ、何言ってるの。僕はまだそんなことできないよ」
淫魔の糧は男の精気である。精気を体内に取り込まないと生きていけない。
正確に言えば、精気を吸わなくても死ぬことはないのだが、摂取しないままだと空腹のまま生きることになり、飢餓状態から抜けられなくなる。だからこそ淫魔は精気を必要とするのだ。
しかし、だからと言って勝手気ままに人間から精気を吸い取ることは許されていない。自由気ままに人間から摂取すると死ぬ恐れがあり、人間の数が減ってしまっては搾取するどころの話ではなくなってしまう。
悪魔の中でも下等悪魔に分類されている淫魔は、高等悪魔と違い細かなルールで縛られている。下等悪魔は高等悪魔のような自制心を持ち合わせておらず、本能のまま振る舞ってしまうからだ。
人間の描く創作の物語の世界の悪魔は、なんにも縛られることなく自由に生きているが現実はそういうわけにいかない。環境問題に世界の国々が頭を悩ませているように、魔王をはじめとする高等悪魔も常にそのことを考えているのだ。下等悪魔である莉々たちはその取り決めに従うだけ。
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