41人が本棚に入れています
本棚に追加
ジュリアンナやルイの話によると最初はすさまじい反発だったらしいが、実際人間が減りはじめて満足に食事ができなくなったことがあり大人しく従うようになったらしい。人間界で生活するための試験や人間界に行くための試験などいくつかの試験を合格しないと、十八歳になって身体が淫魔になっても糧を得ることができないようになっている。
人間界に住む莉々は、必要最低限の資格以外にも既にいくつかの試験に合格して資格を持っている。
類が話した夢の中に入り込めるようになるためにも試験が必要で、莉々はその資格はまだ持っていない。受けるためには条件を満たしていなかったからだ。
夢の中に入るということは人間の精神に直接触れるということだ。起きている時には抑制されている本能をさらけ出すため、簡単に精気を吸わせてしまう恐れがある。だからこそ、術をかける淫魔の方に自制心が求められるのだ。
試験内容は実技と筆記試験で、実技は人間から精を吸い取ることで、今までの莉々には出来なかったので受験ができなかった。
難易度は人間界でいうところの自動車免許に似ていると莉々は認識している。ちゃんと勉強して実技も練習すれば難なくとれる資格だ。
「そっか、じゃあ仕方ないね。僕が試験を受けたのが昔のことだからすっかり忘れていた」
ルイの言葉に、頷くことしか出来ない。ゆうに三百歳は超えているルイからしてみれば十八の頃なんて遠い昔のことだろう。
「じゃあ、とりあえずは生身の男から摂取しないといけないね。そもそも試験に受かったとしても、夢の中に入るには慣れるまでは結構エネルギーを使うし。手軽だけど、やっぱり直接摂るのとは勝手が違うから」
「そうなんだ」
説明されても莉々はそもそも精気を摂取したことがないので同意できない。
「そうなんだよ、やってみれば分かると思うけど。そういえば、精気をくれそうな男のアテはあるの?」
「――まあ、ぼちぼち」
聞かれたくない問いかけに莉々はなるべく自然に顔を背ける。
勘の良いルイのことだ。莉々が自然に振る舞おうとも突っ込んで聞いてくるに違いないと身構えた瞬間、仕事を終えた父親が帰ってきた。
「莉々、おめでとう!」
最初のコメントを投稿しよう!