〈皇帝〉

2/10
3047人が本棚に入れています
本棚に追加
/502ページ
翌日、腹部に鈍痛を感じ、目覚めの悪い朝を迎えたアル。 授業のある日の日常は、朝食を食べてから自分のクラスへと向かう。 授業は実技と座学の2つ。 実技は全く持って得意ではない、座学が得意かと言われたら、それもない。 唯一、週一で行われる、基礎体力をつける授業は得意だ。 だが成績が関係ないので、得意であっても意味はない。 授業を受ける際の席には、縛りはなく、常に自由である。 この規則のせいで、いつも一人のアル。 しかし、今日はどうやら違うようだ。 アルが自分のお気に入りの席に座ると、5分程経過したぐらいに、レナが当たり前のように座る。 アルが誘ったわけでもないのにだ。 というより同じクラスであることを今知ったぐらいだ。 「隣空いてますよね?」 空いてるの知ってて、言ってるなら許さない。 とは口が裂けても言えない。 昨日今日でこんなにも親しく話しかけてくるレナに、尊敬の念を覚える。 正直、手汗が噴き出るぐらいには緊張している。 レナは、制服を着崩し、やたらとスカートを短くしているようだ。 それもあって尚更緊張する。 授業が始まり、すぐに教科書忘れているということに気が付く。 部屋が近いので戻ることが可能なので、手を挙げようとしたら、レナがそっと教科書をシェアしてくれた。 「一緒に見よ?戻るの面倒でしょ?」 女神か? それとも天使? 優しくされるが新鮮で、これだけでも幸せである。 授業を一緒に受け、自分の出来の悪さを晒し、とても恥ずかしい思いをしたアルなのであった。 それでもレナが全部教えてくれたので授業についていくことは出来た。 全ての授業が終わり、放課後。 レナが、試合での動き方について話しあいたいということで、訓練場に行くことに。 昨日のようなセクハラをしないように気を付けなければ。 女子を怒らせると怖いということは昨日、身をもって知ったのだから。 とりあえずお互いに使用できる魔法を確認し、どちらが前で戦うのかなどの戦略を練る。 アルが前衛であることは最初から決まっていたが・・ 「この間の魔法あったら、次の試合も楽に勝てそうだよね?」 そんなに簡単なことではない。 アルカナのカードは気まぐれで、毎回同じカードを引けるとは限らないのだ。 それに使えないカードもいくつかある。 これまでに何度か、練習で使ったことはあるが、一度も光らないカードが複数あった。 まだ使える程の力量がないのか、カードに認められていないのかは分からないが、今はまだその時ではないのだろう。 「あまり期待はしないで欲しいかな。それに僕の魔法は連携には向いていないんだ。使用する魔法が日によって違うチームメイトなんて扱いずらいよね」 「そんなことないですよ、私の方が何もできないと思うので」
/502ページ

最初のコメントを投稿しよう!