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この人の言葉には人をその気にさせる力がある。
この人には逆らえないって思う。
お茶を一口飲むと魔力の枯渇していた体に力が溢れてくるのを感じることが出来た。
すぐに1杯目を飲み切り、2杯目を注いでもらう。
茶菓子ももらい、リラックスしたところで校長が話しかける。
「いい子だ。さてと、君に幾つか聞きたいことがある。まず1つ目、君はレリオン家の長男だね?」
校長が知っていることに驚いたが、トップともなれば底辺のアルでも知っているのは当然かと納得。
アルは頷き、そうだという意志を校長に伝える。
「だよねー。その魔法を使えるのはレリオン家だけだしねぇ・・それにしてもまさかあいつに子供が出来てるとはねぇ。懐かしいなぁ」
どうやら校長と内の父は同級生であるようだった。
校長は意気揚々と父との昔話を話してくれた。
そしてアルの使っているアルカナ魔法の事も。
「その魔法はとても強力であるものだ。聞いたことはあるかもしれないがそれは古代魔法というこの世に1つしか存在しない特別な魔法。そしてレリオン家の血を受け継いでいる君にしか使えない魔法だ。大事に使いなさい。詳しくは図書館に行って調べると良い、試合の件を不問にするわけにはいかないしね」
しれっと古代魔法についてのレポートを課されたアル。
謹慎処分は免除され、レポートの提出は直接校長室へと持ってくるように命じられる。
「それともう1つ。君はアルカナをいくつ使える?」
「1つだけ使えないカードがあります。1つだけなんですが、1度に使えるカードは2つが限界です。彼らは気まぐれなので」
「そかそか。聞きたいことは聞けたし、もう帰っていいよ。先生方には君のこと言っておくから安心して学生生活を送ってくれていいよ」
そう言うと立ち上がりアルを出口へと誘導する。
出口に近付くと扉はひとりでに開き、アルはスムーズに外へと出ることが出来た。
校長はアルを見送り、室内へと戻り窓際に立つ。
「カーリー、いるんでしょう?あの子の事、よろしく頼んだよ。あの子はこの学校の未来・・いや世界の未来を担う王の器を持っている。そしてこの学園にも彼を支える戦士たちが何人かがいる。楽しみだね」
カーリーが棚の影から姿を現す。
どうやら最初からいたらしい。
「あの子‘達‘のことを庇う私の身にもなって下さい。ただでさえ問題児が多いというのに、また一人増えるなんて。私ストレスでこの学校辞めますよ?」
「カーリーなら大丈夫。なんせ私が信頼している友の一人なのだからね」
カーリーは深い溜息をつき、勝手にお茶と菓子を食べ、部屋を後にする。
アルが部屋へと戻ると、部屋の前にレナが立っていた。
レナはアルの姿を見ると、駆け寄りそして抱き付く。
アルの思考は停止し、3秒ほどで思考が戻り、慌てた様子でレナを引き剥がそうとする。
しかしレナはアルを放そうとしない。
よく聞くと、レナの鼻水をすする音が聞こえ、泣いているのだと分かった。
泣いている女子を引き剥がすのは、悪いなと思い、暫くそのままの状態でいることに。
5分ほど経っただろうか、レナはそっとアルから離れる。
「アル君、ありがとうね」
言おうと思っていたがアル君になっている。
充血した目、紅く染まった頬、そして笑顔。
心臓が跳ねるような気がした。
「僕は何もしてないよ、ただ許せなかった。女性に対する仕打ちにしては度が過ぎていた。気づいたら魔法に体を預けてしまって、あんなことに」
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