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試合当日
アルが手にしたカードは〈塔〉と〈愚者〉。
このアルカナ達なら同等かそれ以上の戦いを繰り広げれるかもしれないと確信したアル。
それに奥の手も使えるかもしれない。
レナに試合開始と同時に補助魔法を自分にかけてもらうようにお願いし、あとは自分に任せて欲しいと頼む。
いつものように扉から会場へ入ると、大歓声が2人を包み込んだ。
アルには想像していなかった光景。
ついこの間までブーイングの嵐だった会場に、歓声が吹き荒れている。
アルの戦いは賛否両論はあるが、面白い魔法や体術を使うとして、ファンが増えつつあるのだ。
さらに対戦相手があの天翔姫ということもある。
既にキャンディは会場中央に立ち、2人を待っていた。
「あなたとの戦いを楽しみにしていたわ。どんな魔法を見せてくれるのか楽しみで仕方がない。でもあなたがどんな魔法を使おうと勝つのは私、あなたは私と高みを目指すのよ」
アルが口を開こうとしたのを手で遮るレナ。
「悪いんですけど、あなたに私のアル君は渡しませんよ?それに対戦相手は私もいるのでお忘れなく!」
視線と視線のぶつかり合い。
火花が見えるような気がしたがたぶん気のせい。
そして1つ言いたいのだが、いつからアルはレナの物になったのだろうか?
それを聞きたかったアルがそんな雰囲気ではなかったので心の奥底に飲み込んだ。
レナが元の位置に下がると試合が始まる。
試合が始まるとすぐに、キャンディは風を纏い、飛翔する。
魔法の発動がアルの予想を超え、対処が遅れてしまう。
空から降り注ぐ風の刃。
魔法を避けているのにもかかわらず、皮膚は斬り裂かれ、腕や頬から血が滴り落ちる。
どうやらかなりの広範囲に見えていない風の刃が存在しているようだ。
レナの近くに行かなければならないのだが、キャンディがそれを妨害している。
空を飛んでいる相手に当てられる魔法など使えないし、アルカナを使うわけにはいかなかった。
塔のアルカナを使うにはそれなりのリスクがあるのだ。
強大な力は時に身を滅ぼす。
アルが攻めあぐねていると、キャンディが煽ってくる。
「私の対策を色々練っていたみたいだけど、手も足も出せないなんて、あなたはその程度だったのかしら?そんな訳ないわよね!」
キャンディは掌に渦を巻き起こし、アル達に投げつける。
風の刃の竜巻だと思ってくれればいい。
出し惜しみしている場合ではない。
「アルカナ展開、〈塔〉」
黄色い光が会場に拡がり、観衆及びキャンディの視界を奪う。
光が収まると、先までいた場所にアルとレナはいなくなっていて、何故かキャンディの背後の場所へと移動していた。
アルはすぐに〈塔〉の使用をやめ、レナに速度上昇魔法と力増強魔法を施してもらう。
レナには分かっていた。
アルが目にもとまらぬ速さで、自分の所に来て、一瞬にしてキャンディの背後に行ったことが。
そしてアルが疲弊していることも。
何かしらのデメリットがあの魔法にはあるのだと。
キャンディが戸惑っている間に、アルは力強く地面を蹴ると、驚異的な跳躍を見せた。
そして飛翔しているキャンディの前に跳び、拳をかまえる。
一瞬アルを浮かせるぐらいならレナにもできる。
「いくよアル君!!」
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