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「今の反応・・手を出すなよ?」
全力で首を縦に振り、後退りながらその部屋を後にした。
その後、キャンディが指導室に戻ってきた。
キャンディはアルがいないのを確認すると、アールグレイの前に立つ。
「私がチームに入ったことによってお姉様をソロとして超えられなくなった。私はお姉様より劣り、お母様の顔に泥を塗ったのかもしれない。皆を引っ張る主導力があるわけでもない。一人では弱い私は、チームとしてお姉様を超えて見せる!だから首を洗って待ってて」
「良い目になったわね。私もトップを目指して頑張ってみようかしらね。あなたたちもトップを目指して頑張りなさい。本当の地獄を体験できるから。上位に上がってくるのを楽しみにしておくわ」
アールグレイは立ち上がりキャンディを抱き寄せ、豊満な胸にキャンディを押し付ける。
急な抱き締めに呼吸が上手くできなくなり、苦しそうにじたばたともがくキャンディ。
実はアールグレイは重度のシスコンであった。
キャンディにライバルという存在に仕立て挙げられていたことに嬉しくもあり悲しくもあった。
しかし今日、キャンディに楽しそうに宣戦布告されたことで悲しみは消え、嬉しさで心が満たされている。
「ちょ、ちょっと苦しい!!やめて!お姉様の胸は私を窒息死させる気なの?」
「そ、そんなつもりはないんだが・・私とてこんなに大きくなるとは思っていなかったし、最近肩こりも酷くてな。それに試合中の男どもの視線は物凄く不快だぞ。羨ましいだの、私も大きかったらだの、くだらない。小さい方が戦闘には向いているぞ」
キャンディは決して小さいわけではないのだが、何故か馬鹿にされたような気がして少しムッとした。
なんだかモヤモヤした気持ちを胸に秘め、キャンディはアールグレイと別れる。
これからの自分は、新しい自分。
今までの自分をぶっ壊し、新しい自分を構築する。
アルというダークホースと力を合わせ、トップに上り詰める。
そのためにはもっと力をつけなくてはならない。
今回の戦いでは分かったことは、アルの強さだ。
アルは自分の力を抑えているように見受けられた、まるで殺してしまわないように。
後日、アルとキャンディはあの日の戦いについて話していた。
アルの魔法についてと、あの時使った魔法についてをだ。
「あの時使ったカードは〈塔〉と〈愚者〉。〈塔〉のカードは雷魔法を主体とした魔法を使えるようになる。最初に光を会場全体に広げたのは目くらまし且つどのような魔法か知られるのを防ぐため。体に電気を纏い、瞬間移動を可能にしたんだ。体に物凄い負荷がかかるから連発は出来ないし、使用時間にも制限がある強力なカードだよ」
キャンディは全てを理解した。
目で追えない速さを可能にしたのは雷魔法。
アルが自由に使えるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。
「次に〈愚者〉のカード。これは相手の使った魔法を模倣するカード。その日に見た魔法ならいつでも使うことが出来る。ただし、強力な魔法を連発すると魔力が枯渇して大変なことになる」
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