16人が本棚に入れています
本棚に追加
何て言いながらも、お祭りは楽しんでいる。
あーだこーだ言いながらも、普段は交差点のど真ん中であるが設置されたパイプ椅子の並ぶ休憩スペースでお喋りしながらちょっと話の肴に屋台から買ってきたイカ焼を摘まんだり三味線の演奏を聞いたりしてると、もう夜だ。
「あ、綿菓子いいな」
通りかかった子供が綿菓子食べてるのを見て、どこに屋台があるかキョロキョロと探す。
「そう言えばさっき入ってくる時に入り口付近で見かけたよ」
「それじゃ行こうよ」
「俺はいいや、お金あげるから買ってきなよ」
「あざす!」
小銭を握って一目散に心は綿菓子を目指す。
心は綿菓子屋を探して、さっき太鼓を鳴らす子供たちのやぐらがあった入り口付近までやってくると、すぐに見つかった。
「あったあった」
すぐに綿菓子を一人分買うと、響のところへ戻って食べようとする。
こういう棒つきの物を食べるときはしっかり腰を据えてゆっくり食べるのがマナー。早く食べたくとも我慢する。
と、その時。
「あっ!」
人がこみ合っていたせいか、いきなり揉みくちゃになったところで踵を踏まれバランスを崩してしまう。
転んだ拍子に右足の下駄の鼻緒が剥がれてしまった。
「あちゃ……やば」
勢いよく転んで糸からプッツリ切れてしまって繋ぎ合わすのも難しく、下駄では片足で飛んでいくのも難しく転んだ拍子に膝をすってしまった。
「しまったな……」
さすがの心も土壇場のピンチには弱い。
下駄が壊れてしまったことでオロオロと片足で壁にもたれ掛かるばかりでこの人混みの中を片足で抜けていく勇気が持てなかった。
割りとすぐここまでやって来たような気がするのに、こうなると響のところまで遠く感じてしまう。
「心」
そんな心の前にさしのべる手があった。
「あ、響……」
響の方から迎えに来てくれた。
「テレパシー、忘れるなよ」
「だよね」
この双子にはお互いに考えてることの分かるテレパシーと言う超能力があった。
二人が何を考えているか、声に出さずともハッキリと聞こえ、知ることが出来る。だから今日だけでも特に二人が声にすることもなく会話ができていた。
「ほら、行こう」
響は背中を出しておんぶの姿勢になる。
「水鉄砲。持ってて」
「うん」
「よっ!」
響は軽々と心を背負う。
「力持ち~」
心も響の背中に身を託す。
「このくらい支えられないでどうする」
最初のコメントを投稿しよう!