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「目がチカチカする……ほぼほぼ徹夜でレベル上げしたからな」
ゲームの電源を切ると、目頭を押さえてしばらくじっと動かなくなった。
「ちゃんと寝なきゃ」
「お腹空いた……なんかない?」
すると今度はお腹をさすって冬樹にねだり出す。いつも彼女の行動や言動は気まぐれ、気分次第。
「今日は特に……」
普段飴やお菓子など持っているが生憎今日はもちあわせがないとポケットの中を裏返す。
「じゃあ、なんか美味しいの作ってくれるって約束だったじゃん、いつ作ってくれるのさ?」
「あ……あぁ、そうだったね。ちょっと新しい料理の練習に時間かかっててさ、その内誘うつもりだったんだよ。いや本当に」
夢中になっててすっかり忘れていたと、冬樹は髪をかきあげながら振り返る。
「で、何つくってくれるの?」
「それはお楽しみ」
「焦らしていくスタイル」
それでも千夏的には嫌いじゃないと、彼女も自分の上履きの踵を踏み潰しながら鞄を持って屋上を出ていく。
「その前にちょっと買い物から付き合ってもらっていい?多分材料足りないと思うから」
「いいよ」
二人は学校を出て、学校西側にある冬樹行きつけのスーパーマーケットの方まで歩いていく。
「……どうかした?」
冬樹の後ろを歩いてる千夏はいつの間にか冬樹の前に出て、どこかせくせくと歩いていた。
「……歩いてたらモンスターがエンカウントするような気がして」
「ゲームのやり過ぎ」
どれだけレベル上げしてたのか、冬樹は呆れながらに千夏を追い越す。
「……っ!」
すると今度はただの濁った水溜まりにびくびくして大袈裟に距離を取り出す有り様だ。
「ただの水溜まりだから、そこは毒沼じゃないよ」
そんな完全ゲーム脳に侵食されつつある彼女を心配しつつ、冬樹は彼女からたまにゲームを隔離すべきではないかと考えるのであった。
「大丈夫大丈夫、もう大丈夫」
そう言いながら、ゴミ収積所に置いてあった段ボール箱に手を伸ばす。
「なにやってんの!?」
慌てて冬樹が止めたことで、ゴミが荒れるのは食い止められ、千夏はふと我に帰ったように正気に戻り
「私としたことが……段ボールが、宝箱に見えた気がして」
「やっぱり当分ゲーム禁止」
これは重症だと冬樹は千夏にからゲーム機を取り上げた。
「あ、この鬼! 鬼畜外道!」
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