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千夏が幾らとびはねても、体格差のある冬樹には到底及ばない。
「なんとでもいいなさい」
「小学生の頃にときメモでこっそり欲情してた奴!」
「なんでそんなことばっかり知ってるかなぁ!? 俺たち、中学からの付き合いだよね!」
「さーなんででしょ」
なんてやり取りしながら、国道を逸れてやって来たのは、人の集う様々な店の揃う大規模な商店街。
文房具から機械類まで、大型量販店にも負けない品々を揃えた店の種類と人々の活気があった。
「やっぱり夕方だからか夕飯の買い物に来た主婦っぽい人が多いわね。で、何買うの?」
千夏は買い物カゴを手渡し、冬樹はポケットからスマホを取り出すとメモをしてあったのかどこから回るかの方針を決めるのだった。
「えーと……胡瓜とかんぴょう、さくらでんぶだから八百屋に行ってくるよ」
「てことは、お寿司かな?」
さすがに察するかと言ったような顔の冬樹だったがすぐに持ち直してスマホをしまい
「それもお楽しみ」
「そう? なら私、ゲーム屋の方見てるから」
「ハイハイ」
ただ買い物見ててもつまらないからと千夏は一人、八百屋の斜向かいにある中古ゲーム屋の方へと向かって行く。
一方で冬樹は八百屋。
一部屋分の小さな室内で所狭しと野菜が陳列されている。
「買い物と言うと……よくゲームじゃ店員に話せば買い物出来るけど、実際はそんな簡単じゃないし売却なんか出来ないよなって思ってさ」
ふと、こんなところでゲームのことを思い出した冬樹は八百屋の棚の並びが今までと変わっているのを見て、辺りを見渡す。
「あ、キャベツ安いな……買っておくか」
「こっちのニンジンもなくなってたよな、二つほど」
「ま、こんなものか」
最初から計画的に買うものを決めていたものの、想定外の物まで買って大分大きくなったレジ袋を抱えた冬樹だが、10分も掛からない内に材料を買い終えた。
「千夏ちゃんはどうしてるかな」
少し様子を見に行くかと中古ゲーム屋へ向かうと。
「ぬぅ……」
最近新しいゲーム機が発売したばかりだと言うのに、千夏は最新のゲームには目もくれず隅のレトロゲームの方を目当てに来ていた。
難しい顔してしゃがみながら陳列棚の低いところにある中古ゲームのパッケージを見ながら何度も凝視している。
「買うものは決まった?」
「パックマンかパルテナ」
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