双子と夏休み

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「早くやろう早く!」 息を吹き返したように心はぴょんと跳ねては意味もないのに逆立ちしたり響を急かしては慌ててちゃぶ台まるごと片手で軽々と持ち上げ隅へ片すと、食卓用の四角いちゃぶ台へ変える。 「慌てるな、氷入れて~」 パックから氷を入れるとゴリゴリと言う刃が氷を削る音と共にお腹に置いた皿に氷の粒が溜まっていく。 「おぉ~かき氷!」 雪のように細かく積もった氷の粒が山のように形造り、その存在感は例えるならばまるでエベレスト。 「見てるだけで涼しくなってくる」 熱気迸る灼熱の砂漠をさ迷っていたところで見つけたオアシス。 心は早速、用意した小スプーンで食べようとした時であった。 「響、シロップなにある?」 「あ……」 響が冷蔵庫を確認した瞬間、あれだけ活気ついてた心の表情が曇る。 「でたよ、響の10の内に1絶対失敗する系」 「言わなかった私も悪いんだけどさ……てっきり家にあるかと」 「本当に申し訳ない」 「申し訳ないと思ってるのか!」 ちゃぶ台を強く叩く。 「き、気が立ってる……」 せっかくここまでお膳立てしておいて、希望から一転、奈落へ叩き落とされたような気分だろう心の気持ちも分からないでもない筈だ。 「どうすんのよ! 素かき氷なんて味気ないし」 「カレーライスをライスだけで食べろってくらい酷な話じゃない!」 「言いたいことは分かるけど」 「素かき氷なんて……素かき氷なんて……」 いつのまにか、手がかき氷に伸びている。 「美味しい~!」 「熱いからシャリシャリの氷が身体に染みる」 そして、気がつけば心は氷だけの山盛りを美味しそうに頬張っていた。 「あー! キター! キーン、キター!」 暑さで火照った身体が冷やせればこの際、贅沢は言ってられないと言ったところか。 「美味しい~いやぁ、暑い中ご苦労様」 「いえいえ」 ズキっと来たこめかみを叩いてはさっきまでのだらけぶりは何処へ一人大いにはしゃぐ。 「あ、ジュースならあるよ」 妥協策として、響は冷蔵庫からオレンジジュースとカルピスの原液、リンゴジュースの瓶を持ってきた。 「全部ちょうだい」 「へい」 なんて心が言うと、間髪入れず瓶やペットボトルを正確なコントロールで投げては心は次々と受け止める。 「ナイス。ありがと」 「余裕余裕、打ち合わせ通りのとこ言ったろ?」
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