双子と夏休み

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「ん~美味しい。やっぱり夏はかき氷だよね、おかわり」 心は次々と皿を空にしてはおかわりを要求する。普通なら交互に食べそうなものだが、心はまだまだ食べるスピードの衰えを知らない。 「そうだな、まだ食べるか?」 「うん!」 その事に響は何も言わずにかき氷機を回すと一杯になった氷を心に渡す。 「あー……キンキンする」 響は兄であっても昔から順番は二番目、二つに割ったら大きな方は心にあげる。そんな器量を持っていた。 「次はリンゴ試してみよ」 心は出来上がったかき氷にリンゴジュースをかけるとスプーンでジュースを掻き回すシャリシャリと言う音を楽しみ、口に運ぶ。 するとどうだろうか、氷に溶けた甘いジュースの味が口にじんわりと広がり後から冷たい氷が口内を冷やす。 更には先程からずっとかき氷機を回し削っていたせいか、飛び散った氷の飛沫が清涼感を醸し出す。 「お、これ新発見! ちょい食べてみ?」 心はいきなり目を見開き驚きの表情で食べていたスプーンで一杯掬うと響の口元に近づけていくと、響もなんの躊躇もなしにスプーンのかき氷を食べる。 「ほんとうだ、行けるぞ。これ」 「ふぅ……美味しかった、響交代するよ」 ようやくひとしきり心が食べ終わって満足したところで役割を交代する。 「助かる」 「せーのっ!」 レバーを勢いよく回す。 響よりも握力は強く力自慢なだけに氷を削る音も豪快だ。 「おっと……なんか堅い氷が」 心はつっかえた氷は氷を砕こうとレバーを回す手に力を思いきり込める。 「やっ!」 思いきり回した途端、バキンっと激しい音がしてネジが外れ吹き飛ぶ。 「あちゃ……」 夏バテから復活した心の並みの男を軽く凌駕するパワーの前に古くなっていたレバーなど恐れるに足りることない。 「心ぉ……」 そんな妹をガッカリしたような失望の眼差しで見つめる兄の冷たい視線。 「ゴメンなさい! 許してください、なんでもしますから!」 「ん? 今、なんでもするって」 「あ、お手柔らかに……」 「そんじゃ、これ全部片しといて」 「へーい……」 響に冗談は通じず、至極真っ当なことしか言わないのであった。 「良いってレバー取り付けは俺がやるから」 しかし、すぐに取り付けられそうになく工具が欲しいところだが、生憎ドライバーの類いも倉庫の中。この暑い炎天下の下でサウナ同然に熱された倉庫まで捜しにいく気力は当然どちらにもなく。
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