双子と夏休み

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駅前のお祭りについた二人を真っ先に出迎えてくれるのは太鼓の音色。 それを鳴らすのは子供会の子供たち。 まだまだ陽が照り暑い中で、汗だくになりながらも、後ろに座る子供と交代交代で太鼓を叩く音はよく聞こえていた。 「凄いなぁ、お祭りのために道路まるまる封鎖しちゃうなんてさ」 「本当にね、神社でやるものとばかり思ってたけど」 田舎暮らしの二人は、提灯のぶら下がる神社での催しと言ったイメージであったが、都会の祭は駅前の道路の一部を封鎖して、そこに出店が延々と列を作るように立ち並ぶ。 駅前の狭い通りまで最大限活用し、見て回るのも苦労しそうだ。 「太鼓の音、ここからだったんだ」 まず最初に小気味のいいこのリズムが祭りに来たと言う実感を教えてくれた。 「う~ワクワクしてきた」 「どれから回る?焼き鳥、たこ焼き、焼きそば。一通りあるけど」 鉄板の上で油の跳ねるパチパチと言う音、鼻を擽り食欲そそる香ばしい香りが祭りへの気持ちを高鳴らせる。 「くじ引き!」 「いきなりかよ」 「別にいいんだ。百均のどうでもいいような玩具でも、くじを買って引く。そのドキドキと興奮が醍醐味なんだから」 心はとにかく結果より過程を楽しむタイプ。 「これだ!」 感覚に任せて心は箱からくじを一枚引き出すと目を閉じ、ドキドキと震わせながらそっと握ったくじを店主に渡した。 「三等賞~!」 「いやったぁ!」
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