第3話 勇者の家路

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 ヤンフス大陸を、北を上にして地図を描くと、ベルム山脈はちょうどアルファベットの”C”の形になる。  今コンボイが越えようとしているのは、その東側。Cの字の下の先端だ。  あたりの山々はすべて標高3,000メートル級。今いるところはまさに、夏でも頂に雪をかぶる高さ。  だがベルム山脈では、これでも低い部類に入る。  山脈の西側には一級山頂西1番という、標高9,787メートルの惑星スイッチア最大の山がある。  チェ連ではこの山脈を要塞化することで、幾多の異形の者たちに立ち向かってきた。  そのために掘られた長大なトンネルの一つに、コンボイは入った。 「あの、電気、付けてもらえる? 」  暗くなった車内で、達美がたのんだ。 「はい! 」  答えたのは、金色の髪を持つ少年兵だった。  シエロ・エピコス。  その精悍な顔立ちと、透き通るような青い目。  ヴラフォス・エピコス中将から受け継いだものだ。  重要人物、この世界へ召喚された者たちの乗る車両は、コンボイの中ほどにある。  1台に護衛の兵士は二人。  ともに車両後部のドアのそばに座っている。  護衛者たちにとって、この重要人物たちは謎の存在だ。
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