第1話 戦傷兵が見た青空

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 道を2車線一杯に占領しながら、重苦しいディーゼルエンジンを響かせて兵員輸送車が走る。  6輪駆動に菱型の装甲をのせ、さらに機関砲のついた砲塔を構えている。  それが何台も、つらなって走る。  先頭を走る2台の車の前部には、ブルドーザーのような巨大なブレードがついている。  さらに後ろからは、人間の腕に似た巨大な機械の腕を持つ、双腕重機が追う。  ともにベースは輸送車を改造したものだ。  道をふさぐさまざまな障害。手入れされることもなく崩れた土砂や、倒れた木々。  そんな障害を押しのけ、山の向こうを目指す、長大なコンボイ。  なかには完全武装の兵士。  そして彼らがまもる、重要人物たちを乗せている。  輸送車の中には、10人の兵士が向かい合って座るための、うすいクッションのイスしかない。  周りは360度、鋼鉄の箱だ。小さな四角い防弾ガラスの窓が、間をあけて並んでいる。  そんな窓からの光では、車の中も薄暗い。  コンボイの中ほどの車中では、10席のうち8つに、兵士たちが座る。  身につけているのは、じょうぶなウールデニムの軍服と、防寒用で牛革のベスト。  
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