第1夜

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別れたのに。 どうして今の私を構成してるのも全部あの人なんだろう。 あの人の思い出なんて全部捨てたはずなのに。 無性にイライラした。 生憎、煙草は持ち合わせていないので他人が吐いた紫煙を肺の中に小さく吸い込む。 久しぶりすぎてむせ返りそうなのを、コーヒーを流し込んでなんとか抑えた。 帰りにコンビニで一箱だけ買おう。 そう心の中で決めて簡易のソファーに腰を掛ける。 「あ!ここにいた!」 その声と共に同期がドアを抜けてきた。 「香内探したわよ!!話聞こうと思ったのにデスクにいないんだもの!」 喫煙所には似合わない大きな声に周りにいたサラリーマン達が訝しげな目でこっちに注目してしまう。 「分かったから、ちょっと声のトーン落として。今外に出るから」 折角人が感傷モードに入ってたのに、まぁ見事にぶち壊してくれたものだ。 渋々喫煙所の外に出て、自販機の前の簡易のカウンターに2人で腰掛けた。 「今社内は課長が結婚する話で持ちきりだけどさ、香内知ってたわけ?」 「知ってるワケがない。知ってたらとっくの昔に話してる」 だよねー、と適当に返してくる同期にちょっとイラっとしたが、彼女が続ける話を黙って聞く。 「何が問題ってさ、課長が婚約者と付き合ってたのが半年前からって事だよね」 ポツリと彼女が漏らす。 乾いた声が私の足元に落ちた。
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