お得意さま

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「ふうう……」 私はデスクトップにあるデーターを閉じて深い息を吐き出した。 先生のスケジュールや動きを見ていると、彼をもっと実務的にサポートできる人材の雇用は切実な問題だった。 私よりももっと経験も知識も豊富な人が必要だ。 それが弁護士資格のある人ならさらに申し分ない。 これでは坂上先生が倒れてしまう。 弁護士事務所で事務員となれば、求人を出せばすぐにでも応募が来るはずだ。 なのに、先生はそういう働きかけはしていない。 なぜだろうと思いながら、なんだか私の方がやきもきしてきてしまった。 今日にでも先生に相談してみよう。 先生の体調管理も秘書である私の仕事だ。 先生に倒れられたら、事務所だって共倒れなのだから。 私は少し意気込んで、背もたれにもたれた背中を真っ直ぐに伸ばした。
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