お得意さま

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私はそこでハッとした。 まるで先生に説教でもするかのように鼻息を荒くしている。 「……すみません」 私が俯くと、先生は笑った。 「もう一人嫁さんがいるみたいだな。うちの女房だってそんなに俺を心配してくれないよ」 「すみません、つい……。でも、奥様だってきっと心配なさってますよ?」 「ありがとう。君はきっといい奥さんになるね」 「そ、そんなことありませんよ。私なんて全然……」 「そんなことないよ。そうだ……」 先生は少し考え込むように顎に手を当てた。 私はその次に続く言葉を予想も出来ないでただ待っていた。 「君にもそろそろそういう人を紹介してもいいのかな?」
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