お得意さま

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「先生……」 「どうした?」 「本当にここですか……?」 私がこんな疑問を抱くのも無理はないのだ。 食事の約束と聞いていたけれど、やって来たのは老舗の料亭だったのだ。 とても気軽に食事……という雰囲気ではない。 けれど、私の緊張をよそに坂上先生はクスリと笑う。 「矢島君、随分はりきったみたいだね」 「はりきったって……」 そして先生はもう一つ笑う。 「俺は本当にお邪魔かもしれないね」 「え?」 これは幾度となく聞いたことのある先生のセリフだ。 「先生!絶対に途中で帰るとか、なしですよ!?」 私は先生の前に回り込んだ。
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