運命の人

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パン屋に到着し、二重扉を開けて店内に入ると、 昼時とは違う朝の清々しい空気が広がっていた。 昼間の熱気も甘い香りもまだ感じない。 「あれ?霧島さん?」 聞き慣れた声はいつもレジ打ちをしてくれる宮田さんだ。 彼女の声に調理場にいた数人の顔がこちらを向く。 「……おはようございます」 私は笑顔を見せたがすぐに顔を伏せた。 なにせ、こっちは寝坊をして髪型もメイクもいつもより手抜きなのだから。 「朝、寄ってくださるなんて珍しいですね?」 「たまには……朝から贅沢もいいかなと、思ったんで……」 私は本当の理由を伏せて商品棚を見回した。 朝は朝食に合わせて甘いパンよりもサンドイッチなどの食事パンが豊富なようだ。 私はサンドイッチのコーナーへ行ってたまごサンドを一つ選んだ。 トレイに載せてレジまで行くと「おはようございます」と、宮田さんと入れ違いで奥から店長さんがやって来た。
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