運命の人

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すると、彼は少し気まずそうに視線を泳がせた。 「あ、すみません。いつも帰る時、正面のガラスからあなたのこと、見えてて……」 「正面から……?」 私が店の正面を思い出すまでもなく、私は「ああ」と、頷いた。 店の正面はガラス張りで外から店内の様子が窺える。 昼間は日差しがあるのでブラインドが下ろされているが、陽が落ちると再びブラインドは上げられて、オレンジ色の店内を表から覗くことができるのだ。 つまり、店内からも外が見えるというわけだ。 私はいつもは六時から七時の間には事務所を出ているので、彼が私の姿を見たとしても不思議ではない。
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