運命の人

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しかし…… 彼に見られていたのかと思うと恥ずかしくなる。 仕事が終わって気の抜けた顔をしているに違いないから。 私が恥ずかしさのあまり顔を赤らめると、彼は言い訳するように謝った。 「すみません。閉店時間が近くなると、表の人通りが気になっちゃって、つい外に気が行ってしまうんです」 「……あ、いえ、謝らないでください」 彼に丁寧に謝られると、余計に恥ずかしくなって頬に熱が溜まる。 私は頬を両手で包んで誤魔化した。 けれど、もしもこの時、冷静に考えることができたのなら こんな暗がりでは私の顔色なんて彼には全く判断出来ないことなどわかりそうなものなのに、 この時の私にはそれが出来なかったようだ。
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