運命の人

18/37
340人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「ちょっと店長、霧島さんに何言ったんですか? 霧島さん、困ってるじゃないですか」 声を掛けてきたのは商品棚にパンを並び終えて空の天板を持ってやって来た橋本さんだった。 「別に何も言ってないよ」 「そ、そうですよ。別に困ってませんよ?」 彼女に返事をしながら私は財布の中から小銭を摘まんだ。 「ならいいんですけど。あ、霧島さん、今日は髪の毛まとめてるんだ?」 「あ、はい……」 「なんだか不思議。ほとんど髪の毛下ろしてるのしか見たことないから。ね? 店長」 彼女が彼に同意を求め、彼が確認のためか私を見る。 彼の視線にどぎまぎした私は救いを求めるように彼女を見た。 「は、橋本さん、そんなこと言ったら店長さんが困りますよ。それより……前から思ってたんですけど、七時半のオープンてすごく早いですけど……みなさん、大変じゃないですか?」 私は彼の返事を待つ時間に耐え切れず、慌てて話題を変えた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!