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矢島さんとの食事は先生のおかげでなんとか和やかなまま終わった。
あの場に先生がいなかったらと思うと、少し怖い。
私は思わず身震いしてしまった。
「連絡先、交換してもいいかな?」
あの一言にはドキリとした。
先生なしで矢島さんと会うなんて、とてもできそうになかった。
つまり、今回も心のどこかで期待していた『運命の人』ではなかったということだ。
連絡先の交換に躊躇していると、私の隣で坂上先生が笑った。
「矢島君、悪いね。嫁入り前の大事な従業員だから」
先生が私たちの間に入ると、彼はわずかに不満を顔に滲ませながら手にしていたスマホを握りしめた。
「先生は過保護過ぎますよ。ここは口出しなしでお願いしたいんですが」
攻めの姿勢を崩さない彼に先生も防御を固めるように私を自分の広い背中に隠すように前に出た。
「悪いね。彼女を守っておかないと、同業の彼に叱られるからね」
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