運命の人

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私はつい先程の店長さんの話を簡単に聞き流すことが出来なかった。 事務所に着いてもそのことが頭から離れず、坂上先生がいない事務所で紅茶を淹れ、たまごサンドを頬張りながら私は勝手に彼の一日を想像した。 目に入るのはパソコンのデスクトップの端にあるデジタル時計。 私が仕事を始める頃、彼はもう一仕事終えたというところだろうか。 なのに、眠たそうな顔も、疲れた表情も見せていなかった。 これからきっと、お昼のピークに備えてずっと立ちっぱなしでパンを焼くに違いない。 ……ちゃんと眠れているのだろうか? ……朝ごはんは食べているのだろうか? ……休日はあるのだろうか? 「……大丈夫?」 私は残り一口になったたまごサンドを見つめて呟いていた。
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