運命の人

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先生は上手く作り話に上塗りした。 すると、スマホを手にした矢島さんがわかりやすくため息をつく。 「はあ……。先生みたいなボディーガードがいるんじゃ、なかなか一筋縄ではいかないってことか」 けれど、彼はすぐに笑みをつくって顔を上げる。 「でも、あきらめませんからね」 彼は先生に不敵な笑みを投げた後、私には小さく微笑んだ。 私はその笑みにどう応えていいのかわからず、曖昧な表情で小さく首を捻った。 彼の笑顔とは逆に、私は気が重かった。 彼とは仕事の上で度々顔を合わせることもある。 私に向けられた微笑みよりも、先生に見せた不敵な笑みの方が脳裏に残っていた。
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