運命の人

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私は手のひらで口元を覆った。 大きなあくびが出てしまいそうになったのだ。 今日一日の仕事の後に、もう一仕事終えたようなような気分で急に眠気が襲ってくる。 恋する乙女とは正反対の状況だ。 「さて、タクシーを拾って帰ろうか」 先生の自宅と私のアパートでは方向が全く違う。 「私、ここからならバスで帰れます」 私はそう言うと、バスの時間を調べようとバッグの中を探った。 「あ……」 私はバッグに手を入れたまま固まった。 「嘘……」 「どうした?」 「スマホ、事務所に忘れちゃったみたいで……」
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