運命の人

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私はタクシーが見えなくなるのを見届けると、身体の向きを変えてビルの階段を上がった。 酔っているせいか足が重い。 一人になった私は気が抜けたのか、階段を上り切るまでに大きなあくびを二回もしていた。 事務所に入ると、真っ先にセキュリティを解除する。 その後、電気をつけてスマホを探すと、予想通り電話機の横に置きっぱなしになっていた。 「あった、あった」 スマホを手に取り、画面をタップして着信とメールの確認をするが、用件はゼロ。 どこか寂しくなりながら、私はスマホをバッグに仕舞い事務所を施錠してビルを出た。
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