運命の人

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事務所からアパートまでは徒歩で帰れる距離だ。 その場合、一番の近道となるのがとなりのパン屋の裏を通り抜ける方法だ。 私はいつもの道へ足を向けた。 時刻はもうすぐ十時。 七時閉店のパン屋はもちろん客足もなく静まり返っている。 私は表通りから店の横の細い路地を通って裏手に出ようとした。 その時だった。 「きゃあっ」 私は思わず声をあげた。 店の裏手に回った途端、店の裏口が開いたのだ。 ドアの向こうから現れたのは 「あ……。 ……店長さん」 そう、彼だった。
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