常連客

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私もトレイとトングを手にして、いつもよりも窮屈な店内を身を細くして見て回る。 歯ごたえのよいウインナーを柔らかい生地でくるんだウインナーパンと、ラム酒が香るレーズンクリームを挟んだレーズンパン。 自分が食べるパンをいともたやすく決定し、トレイに乗せる。 そのうちに、2つのパンをトレイに乗せたままいつもより長く店に滞在する私を不審に思ったのか、レジ打ちをしていた橋本さんがお客さんの行列が途切れたところでカウンターから降りてきた。 「霧島さん、今日は随分悩んでますね?」 そう言いながら彼女は私のトレイを覗いた。 「今日は……もう少し食べていただけるんですか?」 「え?」 「あ、すみません。霧島さん、いつもお昼は2つだから」
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