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「弓子に聞いてもらってよかった。ホントだよ。ホントに……よかった。ありがとね」
弓子は鼻から息を漏らして笑った。
「ならよかった。じゃ、これラストにして帰ろっか。明日も仕事だし」
「うん」
私たちはグラスに半分も残っていないビールで今夜最後の乾杯をした。
帰り道、
私は事務所の前を通り、パン屋の横の路地を抜けた。
もちろん、店には人気もなければパンの香りもしていない。
真っ暗に静まり返った店を振り返り私は彼の笑顔を思い出す。
そして、身体の向きを変えて先程よりも歩調を早めた。
なんだか朝が……
待ち遠しくなった。
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