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事務所に戻ると、私は彼に事情を説明した。
「平岡さんにまで嘘つかせちゃって……本当にすみせん。矢島専務には私から連絡させてもらいます。嘘のこともお詫びしないといけないし……」
自分で蒔いた種とはいえ、これからのことを考えると気が重かった。
矢島専務には彼氏がいないことがバレるうえに嘘をついた負い目もある。
しかも、相手は坂上先生が顧問をする会社で立場のある専務。
お詫びするには先生にも相談しなければならなそうだった。
「僕は何ともないけど……」
彼はそこまで言いかけてパンの袋をデスクに置いた。
ビニールの乾いた音に目をやると平岡さんが先を続けた。
「嘘をついたことでそんな顔するくらいなら、『嘘』じゃなかったことにすればいいんじゃない?」
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