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「いらっしゃいませ」
お昼のピークを過ぎているので店内にいる客はさほど多くはない。
顔を見なくてもわかる聞き慣れた宮田さんの声が私たちを出迎えた。
「……こんにちは」
私は彼の背中から顔を出した。
「あ、霧島さん。今日は珍しく一緒に来てくださったんですか?」
彼女の視線は私と平岡さんを往復していた。
「……はい。お昼、遅くなっちゃったんで一緒に。これ以上遅くなると昼食じゃなくなっちゃいますから」
説明しながら視線はなぜか定まらない。
宮田さんを見ているようで、まっすぐには見れなかった。
なぜなら、彼女を正面から見れば、後ろの調理場まで視界に入ってしまうからだ。
何を戸惑っているのか直視できない。
鼓動は相変わらず乱れたままで速度を少し速めていた。
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