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弓子は何かを言い掛けて、その続きを振り払うように頭を振った。
「……やめよっか。ごめん、なんか押しつけちゃったみたいで。美織ってばいい女のくせに今まで浮いた話も全然ないし、一人でヤキモキしちゃっててさ。
久しぶりにそんな話が聞けたからうれしくって美織より私の方が盛り上がっちゃった。
ごめん、おせっかいは性分なの」
弓子はグラスの表面に滴る水滴を撫でながら寂しげに笑った。
「弓子……」
「美織は美織らしく一番大切にしたいものを大事にすればいいよ」
弓子は顔を上げ、いつものように笑って喉を鳴らしてビールを飲んだ。
「ごめん。全然相談になってなくって。せっかく美織が誘ってくれたのに」
「ううん」
私は強く首を横に振った。
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