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その時、パンの入った袋を提げて平岡さんがこちらへやってきた。
「君が霧島さんの彼氏?」
私に話をはぐらかされたと思ったのか、彼は直接平岡さんに尋ねた。
しかし、自信家の彼の声は普段から大きく、この店内では異様なほどフロアに通った。
「あの、矢島専務。とにかくお店を出ましょう。すみません、早めに事務所に戻らなきゃならないんです……」
顔が強張ったままなかなかほぐれず、レジのカウンターにいた宮田さんにも引き攣った笑顔しか作れなかった。
「お騒がせしてすみません……」
私は店にいた他のお客さんも含めて店全体に頭を下げるようにして二人の背中押すようにして店を後にした。
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