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朝から降っていた雨は昼過ぎにはあがり、日中は青空になり切れない白い空が厚い雲をたたえたまま広がっていた。
この日もいつもと変わらない一日を過ごし、定時を迎えようとしていた。
「疲れた?」
向かいから平岡さんがデスクの上の書類棚をかわして私の顔を窺った。
疲れているわけではない。
定時間際にも関わらず、今日中に仕上げるべき書類がまだ出来上がっていなかった。
おまけに今日は水曜なので銀行勤めの弓子の早帰りの日に合わせて夕飯を一緒に食べる約束をしていた。
いつも弓子が店を予約してくれるので、今日は私が気になっていたカジュアルフレンチの店を予約したのだ。
何とか約束の時間には間に合わせたい。
気合を入れた拍子に洩らした鼻息を、彼はため息だと勘違いしたらしい。
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