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「いえ、大丈夫です」
私が首を振ると、彼は「ならいいんだけど」と、手元の資料に目を落とした。
今日はタイトなスケジュールで外回りをこなした彼の方が疲れているはずだ。
「コーヒー入れましょうか?」
私がパソコンのキーボードから指を離して立ち上がると「うん、ありがとう」と、彼は疲れを隠して笑顔を見せた。
流しに向かいコーヒーを淹れると、こっそり買い置きしているチョコレートを一粒添えて彼に出した。
「ありがとう……チョコレート?」
彼が一口大のチョコレートを指で摘まんだ。
「平岡さんの方が疲れてるんじゃありませんか? 甘いもの……疲れた時にはいいですよって、私は疲れてなくても好きですけど」
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