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翌日も天気は天気予報を裏切らない雨模様だった。
けれど、夕べ弓子と会えたおかげか身体は軽い。
それはいつもより15分ほど早起きしたことが証明していた。
私はそのままいつもより早く家を出た。
早起きは三文の徳と言うが、そんなことはたいして期待していない。
ただ、最近寝坊のことで坂上先生にもからかわれているので、たまには早く出社しようと思ったのだ。
しかし、私はパン屋が見える距離まで来た時、古い教えのありがたさを実感した。
「おはようございます」
店の裏にいた彼が私を見つけるなり挨拶をしてくれた。
「……おはようござます」
傘に打ち付ける雨の音で、自分の声の方が聞き取りにくかった。
私は進行方向に逆らえず、徐々に彼との距離を縮めていた。
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