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「早起きは三文の……」
私は一人で呟き、傘の柄を握りしめた。
事務所のあるビルの前に着く頃には顔の火照りは落ち着いたものの、速まった鼓動はまだ治まっていなかった。
ビルの入り口で傘を閉じて水滴をはらった。
階段を上がり始めると、最初は軽かった足取りが徐々に重たくなってくる。
乱れた鼓動が今度は胸を締め付ける。
自分の気持ちに気付きそうになりながら、私の脳裏にちらつく理性が邪魔をする。
弓子にあんな風に言っておきながら、こんな状況で思い浮かぶのは彼女からの言葉だった。
『探してるのは好きな人なんかじゃなくて、結婚相手よ』
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