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「さあ、行っておいで。となりのパンを食べて午後からまたやる気を出してもらわないと。午後はほら、これを頼みたいからね」
坂上先生はデスクに積み上げた案件ファイルの表紙を手のひらで叩いた。
確かに、しっかりエネルギーを補給しなければならなそうだ。
「わかりました。先生はもう召し上がったんですか?」
「ああ、俺はもう食べたから。最近はちゃんと食べてるんだよ。君と平岡君のおかげでね」
先生がゆったりと笑う。
ここのところ顔色もいいように感じた。
私はそれに安堵しながら財布を手に事務所を出た。
しかし、事務所は笑顔で出たものの、階段を下りる頃には歩みが遅くなる。
なのに鼓動は少し……
早まっていた。
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