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この道は普段は誰も通らない。
近道と言ったって人一人がやっと通れるほどの幅しかないので誰も裏へ抜けられるとは思わないからだ。
彼女は店の外壁に寄り掛かったままうなだれていた。
「すみません……」
私の気配に気が付くと彼女は囁くようにか細い声で謝り、顔を背けるように私に背を向け、細い身体をさらに細くして壁に密着させた。
「すみません……」
今度は私が謝り、上半身を右に傾けながら彼女の横を通り過ぎた。
色白の彼女の横顔が少し赤い。
私の背後で、
彼女の鼻をすする音がした。
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