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私は空に向かってため息を吐き出した。
当然だが空の雲はびくともしない。
私はもう一つ浅くため息をついた。
矢島専務に嘘をついている罪悪感よりも、自分を偽っているような違和感に落ち着かなくなっていた。
考え事をしていたせいか天候のせいなのか足取りが重く、いつもより通勤に時間がかかっていた。
パン屋が見えると一瞬躊躇うが私は歩みを早めた。
店の裏の半分開けた小窓から
芳醇なバターの香りが漂ってくる。
それを鼻で浅く吸い込み、小走りで店の横の路地を抜けた。
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