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今まで彼が見せた笑顔は
なんてことはない、
お客様に向けられたものにすぎなかったのだ。
お客様は神様だって言葉があるように、彼にとってはお客さんはみんな特別な存在なのだ。
特別の中に、
『特別』はない。
誰か一人が彼の特別になることなど出来ないのだ。
私は足早に店の裏へ抜け出すと、さらに小走りで店から離れた。
夏の始まりを埋め尽くす熱気を帯びた空気が私の足にまとわりついて足が重くなる。
私はそれに耐え、まるで逃げるようにアパートに駆け込んだ。
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