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「……帰りに弓子にお土産買ったんだけど、また今度ね」
『お土産? お土産って何?』
「……パン」
『パン!?』
「となりの……パン屋さんのくるみ入りの食パン」
『そっか……。ありがと』
「また、今度になっちゃうけど。ごめん、じゃあ休むね……」
私は弓子との電話を終え、座り込んでいたフローリングの床に携帯を置いた。
弓子との約束を延期するほどでもなかったのかもしれないが、足元から這い上がってきた空気は私の全身を鉛のように重くしてしまった。
今はもうここから立ち上がるのさえ億劫だった。
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