結婚相手ー2

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物音を立てないように玄関まで行き、息を潜めてのぞき穴を覗くと大きな目を見開いてこちらを覗く弓子がいた。 「……弓子!?」 私は鍵を開けてドアを押し開けた。 「やっと出た。……帰って来てそのまんま? 皺になるじゃない」 弓子は私の服装に目を留めたかと思うと、靴を脱いで私を玄関に置いて中へ入って行った。 「弓子……どうしたの?」 私が弓子を追いかけると、彼女はソファに座りながら振り返る。 「お土産のパン、せっかくだからもらいに来たの」 彼女は笑った。 「あ、うん。わざわざごめん……」 私はキッチンのカウンターに置いたままの食パンを彼女の前のテーブルに運んだ。 「これが噂のパン屋さんのパンね」 弓子は食パンを手に取ると目の高さに掲げてニヤリと笑った。
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