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「矢島君? 矢島君がどうかしたの?」
先生は少し驚き、のけ反りながら返事をした。
「たいしたことじゃないんですけど……。前回一緒にお食事した時、彼に嘘をついてしまったことが気になってて……。
あ、つい先日もとなりのパン屋さんで矢島専務に会ったんです。その時にも専務、そのことを話題にしてたので余計に……」
私が口ごもりると、坂上先生は「ああ、あのことか」と、思い出したようだった。
「そんなに気にしなくてもいいんじゃないかな? 彼も半分は冗談だったかもしれないし、君がそんなに気に病むことはないと思うよ」
私の硬い表情とは逆に、彼は軽い口調で言った。
先生にとってはたいしたことではないのはわかる。
しかし、私にとっては重大なのだ。
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