自惚れ

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「二人で?」 私の提案がよほど予想外のものだったのだろう。 先生の目が一回り大きくなった。 「……はい。ちゃんとお伝えしたいことがあって」 「あの時から気にしてたことか。君がそんなに悩むなら俺も悪いことしちゃったな」 先生は私の事情を薄ら察したのか申し訳なさそうに眉を下げた。 「いえ、先生は少しも悪くないですから。私だって最初は全く気にしてなかったんですから……」 もしも、私が自分の気持ちに気付かなければ、こんな風には思っていなかっただろう。 なんとなくやり過ごすことは簡単だ。 「お詫びに俺が店を予約しておくよ。前みたいな店ってわけにはいかないけど、君にとってはその方がいいだろ?」 「ええ、まあ……そうですけど……」 あんな敷居の高い店では雰囲気だけで緊張してしまうから。
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