自惚れ

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「ありがとうございます」 彼は笑顔を見せながら商品棚に残りのパンを並べる。 私は俯いたままパンが増えていく棚と、減っていく彼の天板を交互に見つめていた。 そして、天板の上が残り一つになった時、彼は振り向きざまに私を呼んだ。 「霧島さん」 彼に気付かれないように浅い深呼吸していたはずが、鼓動は速度を緩めていない。 「……はい」 「僕から一つ、おすすめしてもいいですか?」 「……あ、はい、ぜひ」 「このチョコリング。今、焼きたてなので中のチョコがとろけてますよ」 「あ、じゃあ……それにします!」 伏せた視線が床を這って大きく飛び跳ねた。 彼の話を聞くだけで口の中にチョコレートの甘い香りが広がっていくようだ。 彼は私の威勢のいい返事を聞くとそれまでの微笑みをさらに深めた。 「よかった。お口に合うといいんですけど」
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